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第七十六話 ひとりで行かない

Author: 海野雫
last update publish date: 2026-09-15 19:08:27

 スマホを持つ手が小刻みに震えた。足の裏に根が生えたように、その場から動けない。

 直哉はなぜ、澪の実家にいるのだろう。「全部ぶちまける」とは、なにをぶちまけるつもりなのだろうか。

 澪は悪いことは一切していない。一方的に別れを告げて婚約を破棄したのは直哉のほうだ。それ以外の事実はない。

 それとも、家族に危害を加えるつもりなのだろうか。

 もしそうだとしたら――。

 家族を守るためには、澪が直哉のもとへ行かなければならない。澪が一歩踏み出そうとしたとき、その足が止まった。

 いや、澪が直哉のもとへ行ったら、直哉の思う壺だ。直哉の思いどおりにさせてはいけない。

 澪はスマホを持つ手に力を込めた。

「どうした? なにかあったのか?」

 気づけば、来場者はすでに会場を後にしていた。見渡せば、撤収作業が始まっていた。

「あ……うん」

 澪は仁からスマホの画面を隠すように、画面を伏せた。仁は眉間にしわを寄せ、

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